春子。婆。昔ながらの屋台のおでん屋店主。
ただのおでん屋なのに、近所の寂れた稲荷で手を打つと、知らない世界に飛ばされるようになってしまった。
だが場所など関係ない。春子はいつも通りのしかめっ面でうまいおでんを客に食わすだけ。おでん屋だからだ。

怒り、悲しみ、生活や仕事の疲れ。追い詰められて一歩も歩けなくなっていた人たちに差し出される一皿のおでんと偏屈婆のぶっきらぼうな言葉。
それらに背中を押され立ち上がり、顔を上げ、彼らはそれぞれの道の先に向かって歩き出す。

彼らが歩んだ道の先が交差するその日、国にいったい何が起こるのか。

舞い散る白い紙と花吹雪の背景でお届けいたします。あの日おでんハフハフ食ってたあいつらの、それぞれの一世一代の大舞台、どうぞお見届けくださいませ。

前回表紙に婆がいましたが今回はおでんです。

小説家になろう掲載の一章部分に、人物とエピソードを追加、ほぼ全ページを改稿しております。
あのシーンにちょこ、こっちのシーンにちょこ、と隙間隙間を狙って書き下ろしをねちっこく差し込みました。
口絵にはあのシーンが。おでんも登場人物も非常に美味しそうに、楽しそうに、麗しいイラストで描かれておりますので目でもお楽しみください。

あったかくなってきておりますがおでんに季節なんか関係ない。
さあどうぞおでん。じゅわっとおでん。
飲み過ぎて弱ってる翌朝に、冷房で冷えちゃった体に。あなたの隣にはいおでん。いつだっておでん。振り向けばおでん。オールウェイズおでん。

おでんと酒をご用意のうえお読みいただけますと光栄です。どうぞよろしくお願いします。