王立学園の卒業パーティの席上、
侯爵令嬢のエリーゼは
王子のアルフォンスから婚約を破棄され、
男爵令嬢のビアンカと婚約すると告げられる。
エリーゼはアルフォンスの言葉を受け入れ、
さわやかな笑顔で家へ戻った。
物心がついてより、前世は日本で社会人として働く
女性との記憶があるエリーゼは10歳のとき、
王妃の望みによって婚約が決められた。
前世の読書経験から、
悪役令嬢の運命を予感して動揺するエリーゼは、
初の顔合わせ以来、アルフォンスから嫌われる。
自身の婚約破棄はかまわないが、
侯爵家への損害を避けたいエリーゼは、
学園への入学に際して
愛する家族を守るためなら
どんなことでもすると決めた。
エリーゼは謂れのない罪を着せられないよう、
ひとりにならないこと、
アルフォンスに思う人が現れても
いじめないことを決意し、
学園生活を乗りきろうとする。
アルフォンスは父で国王のジェラルドが
王妃に従うだけの姿に反感を持ち、
母が決めた縁談に、
自分は父と同じ道を歩まされると考えていた。
また、エリーゼが優秀だったこともあり、
アルフォンスは彼女が自分をお飾りにして
実権を狙う存在とみなしてもいた。
エリーゼたちと同時に入学したビアンカは、
一年前から常にアルフォンスと
いっしょにいるほどの仲となっていた。
エリーゼを嫌うアルフォンスが
自分へ好意を向けてきたことから、
ビアンカは彼の婚約者の座を狙うようになる。
エリーゼからいじめられていると装う
ビアンカに対し、
アルフォンスは彼女の思い通り、
エリーゼへの嫌悪感を募らせ、
ビアンカを妃にと考えるようになった。
学園卒業の数日前、ビアンカから幾度も
痛い目に遭わされてきた子爵令嬢は、
アルフォンスの婚約破棄と新たな婚約について
エリーゼへ知らせる。
その情報を父と共有したエリーゼは、
パーティ当日のアルフォンスの行動に対し、
冷静に対処した。
日ごろから評判が芳しくないうえ、
非道なふるまいを行ったアルフォンスは、
スムーズな王位継承が危ぶまれる事態となる。
アルフォンスの側近は
王位を継げる位置にある王弟、
フレドリックの評判を落とすべく、
「傷物」のエリーゼを娶らせる計画を思いつく。
フレドリックは辺境伯の地位にあり、
「魔獣」が跋扈する「悪魔の森」を含んだ
辺境の地を統括していた。
ビアンカかわいさに、
エリーゼを憎むアルフォンスにとって、
彼女を辺境に追いやることは望むところで、
計画は進められる。
武道に優れ、結婚より領地の安定を優先してきた
フレドリックのもとに、国王の名のもと、
エリーゼとの婚姻を強制する書状が届いた。
同じ内容の書状が届き、
遠く離れた地へ嫁いだエリーゼは、
彼女が王命に従っただけと考えて
気を遣うフレドリックの言葉を
自分へ興味がないと誤解し、
せめて領地の役に立たねばと強く思う。
学園を卒業したばかりの侯爵令嬢。
容姿は美しく、碧眼に黄金色の髪、白い肌を持つ。
性格は素直で、家族思い、
国内最高位の地位にある家庭に育ちながら、
おごることもない。
社会人だった前世の影響もあり、頭脳は明晰。
学園では周囲に好感を持たれた。
聡明さゆえに王妃から目をかけられ、
父ともども反対したが押し切られた結果、
フレドリックとの婚約に至った。
学園では友人と仲を深め、
悪役令嬢として断罪に至らぬよう努めた。
先代国王と側室との間に生まれた、王弟。
のちに辺境伯の養子となり、爵位を継いでいる。
緑色の瞳で、黒髪を後ろでひとつに結び、
顔だちは美しくて中性的。
背は高く、身体つきはたくましい。
穏やかで素朴な性格で、
領民には感謝の気持ちを忘れず、対等に接する。
文武両道の優秀さも伴い、
自らが率いる騎士団や領民から愛されている。
王座へ関心はなく、
「魔獣」との闘いに明け暮れているため、
異性とは縁遠く、女嫌いとの噂もあった。
エリーゼと同い年の王子で、
国王夫妻のひとり息子。
亜麻色の髪に緑色の瞳で、
王子にふさわしい容貌を持つ。
性格はわがままで、思考は浅薄。
学業にも身を入れず、
後ろ盾だった王妃が亡くなってからは
生活態度が乱れ、他人へ配慮を欠く言動も。
貴族令嬢からの人気は高かったが、
次第に疎まれるようになっていった。
父王の側近の息子達である
アーサーとルークという幼馴染の2人を
側近として重用している。
自身のコンプレックスから、
優秀な母やエリーゼへ嫌悪感を抱いてきた。
男爵家の長女で、エリーゼたちとは同級生。
野心が強く、目的のためには
他人を陥れることも厭わないなど、
手段は選ばない性格。
幼いころに身分差を理由に
友人から遊ぶことを拒まれたことから、
伯爵家へ嫁ぐことを願っていた。
カフェ通いが趣味だが、
その理由のひとつは噂話が聞けるため。
そこで耳にした内容を利用して
欲しいものを手にしたこともある。